- 初心者が上達するには、どんな油彩技法から始めればいいのか
- 人物画を描く上で効果的な油絵技法
少し技術的な話がテーマです。
なんといっても、技法は世のなかに溢れてますよね。
本であったり、先生から教えられることであったり...
そして、いろいろ学んでも何から始めれば良いか分からない、
そんなあなたに、
安心して使える、おすすめの油彩技法を紹介致します。
具体的な内容の前に、まず抑えて欲しい超基本的な概念がありますので、そこから話しますね。
油絵の基本概念
油絵を始めるうえで、押さえるべき超基本的概念は、
【明るい色を描き起こしていく】
という概念です。
これが、油絵の基本定義になります!!
まあ、実際描いてもらうと分かると思います。
鉛筆デッサンや水彩画は、明るい部分や白い部分に調子を置かないことにより明るさを表現します。描かずに最後まで残す部分が最も明るい箇所になります。
下地の白い画用紙の部分ですね。
対して、
油絵は明るい部分に絵の具を乗せていくことにより明るさを表現していきます!!(これがとても重要!!)
ホワイト色はよく使う重要な色になります(個人差はあります)。
※私自身は、重厚感のあるシルバーホワイトが好みです。鉛白の絵の具(体に入ったら死ぬ)で、マチェール感を表現するのにとても適しています。*1
油絵は明るい部分に、たっぷりの絵の具で描き起こしていけますので、平面的芸術表現でありながら、3D表現の面白さも併せ持つという、他の絵画表現には無い特性を持ちます。
油絵とは、とても素晴らしい表現媒体です。
技法はなぜ必要か?
そもそも論ですが、技法の必要性について先に定義しておきましょう。
それは、ずばり技法を身に着けるなら、手っ取り速く理想的な絵画表現を実現できるからです。
絵の起源をさかのぼりますと最古の洞窟壁画など、単に物質の表面上に線や色をつけたものに至るわけですが、果たしてそこを目指して絵を始めた人が現在人に存在するでしょうか。
あえて技術の発達していない時代の表現を、現代において再現しようとは思わないはずです。
やはり、磨かれ育まれてきた技術を駆使し自らの表現に昇華させたいと思うでしょう。
だから、技術を習得するわけです。
それは、あなたが早く上達する助けにもなるのです。

人物画における入門的技法
では人物画を描く上で役に立つ、入門技法を紹介していきます。
グレージング技法
最初に覚えておくと良い、一番おすすめの技法は、
【グレージング】
という技法になります。
さっそくグレージング技法を用いた人物画をご覧ください👇

グレージング技法とは:
茶褐色系の絵の具をたっぷりのオイルで薄めます。
その薄めたものを人物画全体に施して薄いフィルムのような効果を画面に与えます。
これをグレージングといいます。
グレージングによって画面全体のトーンを落として調子をボカした後、明るい色で描き起こしていきます。その工程を何度か繰り返します。上の絵は、繰り返さず一度だけグレージングしています。
明るい色は、シルバーホワイトを大量に用いて盛り上げるように描いてます。
グレージングは、一度絵の進行具合を後退させているように感じさせますが、この行程を繰り返すことにより、より深みのある魅力的な絵に進んでいきます。形を整えていくのにも一役かっている行程になります。恐れずに大胆に進めてください。ただ、油分の吸収には注意しましょう。あまり乾性油を使いすぎると絵の具がはじかれて乗りにくくなっていきます。
有名な画家でいうと、レンブラントがよく用いていた技法になります。
レンブラントの絵を、じっくり観てください。
生きているかのように迫ってきます。
明るく描き起こした部分が画面から飛び出すように迫ってくるのです。
人物画を描くうえで、立体感のある、生きた絵を生み出すには、1番手軽な方法だと私は確信しております。
フィルムのような表現を生み出し、透明感のある作品に仕上げることができます。
★詳しくは、また別の記事で追って紹介します!!
次に紹介するのは、個人的にお気に入りの技法になります。
グリザイユ技法
次に紹介するのは、個人的にとても好きな技法、グリザイユ技法です。
順序だてて制作していく技法で、手順に沿って描いていくだけなので、描くことだけに集中できます。
それほど悩む必要がなく、脳みそのスタミナ的にも省エネな、コスパの良い技法といえます。

グリザイユ技法についてのツイートを下記に載せておきますので参考にしてください👇
キャンバスに、木炭で下描き→グリザイユを二層→乾性油で画面を湿らせてからの、彩色二層
で描いてます。木炭の下描きから、おつゆ描きの段階は踏まず、直接グリザイユに移行しています。
木炭の下描きをしない場合は、オーカー色でのおつゆ描きの段階を踏みます。#グリザイユ #油絵 #下描き pic.twitter.com/EMGRov9O6b
— お絵描き父さん daddy’s in oil painting 芸術を通して心に安らぎを🎨 (@Oekakitosan) 2020年2月16日
じっくり描き込みたいという方にもおすすめの技法です。
ただ、直感を生かして感覚的に色を乗せていきたい画家には向いてない技法と言えます。(印象派タイプの画家には無縁かもしれません。)
★グリザイユ技法についてはまた別の記事でくわしく取り上げます。
その他の技法
アラ・プリマ技法
色遊びなどで、色彩感覚に優れている方、直観で描きたい方は、アラ・プリマという技法に挑戦してみてもいいかもしれません。
感性や直感に左右されるので、色彩感覚の能力は必須です。
スピーディーに一気に描き上げる技法で、直感的に色を画面に置いていきます。
大抵、モデルを観察して、見えたままの色を置いていくことになります。
肌を描いているのであれば、見たままの肌の色を直接どんどん乗せていく感じです。
絵の具が乾くのを待たずに、次々に色を乗せていきます。
なので、明るい色を上に乗せていくという油絵の大前提は、とても大切になってきます。
グレージング技法やグリザイユ技法と違って、色をキャンバス上で混ぜ合わせることもしばしばです。
これといった正解の描き方が無いのもこの技法の魅力で、画家によって進め方はさまざまになるでしょう。
感覚が大切ですので、悩むより一気に進めていくことがコツです。
アラ・プリマ技法を用いて制作した私の作品は以下になります。直観的に色を置いていきました。👇

仕上がった作品は、少し表面的な色合いになり、透明感や深みといった点では、グリザイユ技法やグレージング技法には劣ります。
しかし、その時の感性や勢いを削ぐことなく、独創的な作品を表現することができるでしょう。
- 油絵の基本概念を抑える→明るい色を描き起こす
- 入門的技法から始める→グレージング技法がまずはおススメ
- じっくり描き込みたい方→グリザイユ技法
- 感覚派→アラ・プリマ技法
このような形で引き続き、アート関連の記事を掲載していく予定です。
今後ともよろしくお願いいたします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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*1:マチェールとは立体感や質感を表す
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